オルコス領の赤雪(リゼロ)をネタバレ考察!グステコ聖教と神殿騎士の祝福や霊獣オドグラス!エルザの黒髪黒瞳は古い血筋が原因?

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今回は月刊コミックアライブ2016年10月号、12月号にて掲載された『Re:ゼロから始める異世界生活』の外伝小説『オルコス領の赤雪』前編・後編についてご紹介します。

一部6章までのネタバレを含みますので予めご注意ください。

・エルザの黒髪黒瞳
・グステコ聖教と神殿騎士
・霊獣オドグラス
・祝福と呪い人形

などを解説しています。

エルザ関連の小説を時系列ごとにすると『アポカリプスガールズ』→『オルコス領の赤雪』→『本編』という流れですね。

リゼロ外伝小説ネタバレ
ゼロカラカサネルイセカイセイカツ アポカリプスガールズ
剣鬼戦歌 紅蓮の残影
赫炎の剣狼 Sword Identity
EX4最優紀行 Golden Sibilings
オルコス領の赤雪 魔女のアフターティーパーティ
氷結の絆 ゲーム偽りの王戦候補

動画での解説はこちらからどうぞ。

目次

「オルコス領の赤雪」のネタバレ

①:酒場に現れた女

視界には一面の雪が覆い尽くされていた。雪原には無数の屍。「…ここは何も変わらないわね」囁くようにそうこぼしたのは、吹雪の中に立ち尽くす黒い装いの女。遅れて到着した完全武装の一団。その光景に声の出ない集団に黒い女は振り返り「――ごめんなさい。待ちきれなくて、つい、先走ってしまったのだけれど」と形だけの謝罪を告げた。

ーーグステコ聖王国は、四大国の中で最も過酷な自然環境で知られる国。そうした厳しい環境に根差し、生まれたのが『グステコ聖教』。全ては大いなる存在が人々に与えた試練であり、その試練に耐えることこそが、死後の魂に安寧をもたらす唯一の術であるとした教義だという裕福な土地に生まれたものには理解し難い思想。

「おお、労働の喜びよ!命の水よ!今日もこうして生き長らえたこと、我らがグステコ聖教の聖王様と、聖教の慈母に感謝を!乾杯!」酒場は浴びるように酒を飲む一団によって占領されている。そんな中、ひどく男の劣情を催させる美貌を持った女がカウンターへ向かう。「――ミルクを」「――おいおい、酒場にきてミルクってなぁいただけねえな」と男が女の方へ行き、酒を奢る。そして「――聖王と、慈母に」と乾杯をすると女はグステコ聖教の信徒なの?と聞くと口先だけの信徒だと言う。女も気持ちはわかる私もこの国の出身だからと言う。

そして男は今日は貸し切りって知らなかったかと女に聞くと「――イゴール・ケナシュ」「私がここにいるのは彼の指示よ。ケナシュ男爵はご存知?」と言う。すると男は知っているも何も今日の酒場の支払い主もケナシュ男爵だと言う。そして男はこれだけいい女までつけてくれるとは太っ腹だと女を抱き寄せる。

そんな中「――ログレス!ログレス・ハイアットはいるか!」と声が聞こえた。すると女の隣にいた男の下へ叫んだ青年が駆けつけてきて、「イゴール様がお呼びだ。至急、『紅猟団』の団長は屋敷へ顔を出せと」と言う。目の前に女がいるので渋るも「イゴール様は至急と仰せだ。求めに応じてもらおう『屠殺人!』」と言われ、諦める。

②:オルコス領の浄化

ログレスはお偉いさんに呼ばれちまったというと、女は「安心して。――呼ばれるのは、あなただけじゃないはずだから」と言いログレスを呼んだ青年に訪ねた。すると青年は「……はい。イゴール様はあなたのこともお呼びです。ご足労いただけますか?」と言う。「お互い、呼ばれた相手は一緒。――エスコートしてくださる?」「そりゃ構わねえが……姉ちゃん、名前は?」「――エルザよ。エルザ・グランヒルテ」

その名前を聞いて、店内は一斉に動揺が広がった。酔っていた歴戦の傭兵達が揃って声を失った。名乗った名前にどれほどの意味があるのか。ログレスは顔を掌で覆い「ああ、クソ。いい女だと思ったってのに……あの『腸狩り』たぁな」と言う。

エルザ達を自室に迎え入れたのがイゴール・ケナシュ男爵。イゴールはエルザの働きと美貌を褒め、吾輩のモノになる決心はそろそろついたか?と聞くと「残念だけれど、お断りするわ。私、不健康な生活の殿方には魅力を感じなくて」と言う。そして話は本題に入りイゴールは「ここまでの働き見事。その功績に報い、其方らを本格的に吾輩の子飼いとしたい。その上で其方らには、オルコス領を浄化する作戦に着手してもらうのである」と言う。

ヴィクター・オルコスの治める隣領は人身売買の温床と化したので、早々にこの不祥事を葬らればならないとか。ヴィクターはグステコ聖教団から釈明を求められたがこれを拒否し徹底抗戦に出た。イゴールは一刻も早く事態の収拾をしたいようで「このようなことが聖教の慈母に……『霊獣』オドグラスに知れれば、国が割れる」と話す。

オドグラスは精霊の中でも突出した力を持つ大精霊であり、その強大な存在は四大精霊の一角に数えられている。基本的に世界の在り方に干渉しないのが精霊だが、オドグラスはその中でも例外的に、人間に対して友好的な姿勢を取り続けている。永久凍土に支配されたグステコで人々が生きられるのは、オドグラスの支配下にある無数の精霊、微精霊が力を貸してくれることが大きい。それ故に、オドグラスとグステコ聖王国とは長く深い友好関係を結んでいる。

③:霊獣オドグラスと神殿騎士

聖王国と聖教団のトップ、聖王を決める権限はオドグラスに与えられており、その歴史はグステコ聖王国の始まりから綿々と受け継がれる伝統。その形式は崩せない。オドグラスにはこれまでも、これからも、変わらず聖教の慈母で在り続けてもらう。――聖王を傀儡に、教団がこの国を支配し続けるために。

イゴールによれば、この伝統の崩壊を防ぐのが使命だと言う。そこでログレスが聖教団ご自慢の神殿騎士を動員した方が早いんじゃないかと話す。神殿騎士とは、グステコ聖教団が保有する教団戦力。聖王の祝福を受け、人外の力を振るうとされる選りすぐりの精鋭。一説にはヴォラキア帝国の九神将にも匹敵する実力者集団と国の内外で噂されている。イゴールはそれには聖王の承認が必要でこれが知られれば霊獣に露見するのも時間の問題だという。

そして翌日からオルコス領の浄化作戦は実行に移された。浄化作戦の内容はログレス率いる紅猟団を筆頭にイゴールの私兵がオルコス領の守備兵を次々と攻め立てる。その陽動に腸狩りが敵地に潜入し指揮官や予備兵力を暗殺することだった。

「ああ、素敵。――ゾクゾクしちゃう」愛用のナイフを回し、立ち塞がる人影に容赦なく叩きつける。エルザの足下、砦の通路にはすでに十を超える死体が積み上がっていた。砦の最上層、通路の一番奥にある鉄扉を蹴り開け、部屋の中に飛び込んだ。静かに出迎えたのは部屋の主である老兵。老兵はその身に年季の入った鎧を纏い、手には鋼鉄製のメイスを握っている。この老兵が、砦にいる守備兵の頂点だと肌でわかった。

「『腸狩り』、エルザ・グランヒルテ」「悪党に名乗る名などない。――征くぞ、悪鬼」老兵は一気呵成に距離を詰め、老人の腕力とは思えない速度と威力で打ち下ろされる一撃は石造りの砦の床を粉砕し、下の階へ威力を貫通した。もうもうと噴煙が室内に立ち込め、そして煙が晴れたときには四肢を投げ出して倒れる老兵の姿があった。「――あなたの腸は、とても綺麗な色をしていると思ったの」それが、この日の砦陥落を決定付ける戦いの幕切れだった。

④:趣味は編み物

部屋に足を踏み入れたログレスはその光景に驚いた。「毛糸の編み物よ。寒い国ですもの。別に物珍しいものではないでしょう?」「編み物自体珍しくなくても、編み物してる奴が意外すぎたんだ。あんたみたいな女でも、編み物なんてするんだな」「あら、ひどいわ。これでも私、自分の編み物の腕には自信があるのだけれど」と編みかけの作品を広げる。ぼんやりと完成形の見え始めたばかりの人形。子どもが喜びそうなデザインでその可愛らしさと繊細な造りは素人目にもかなりの腕とわかる。人形作りはもう十年以上前からやってるそう。

エルザに宛がわれたこの部屋はまさに今日落としたばかりの砦にある一室。エルザは黙々と手元を動かし、毛糸の人形の作成を進める。毛糸を編んで作る人形は、難しい道具も思考も必要ない。カギ針を使って頭や胴体、手足などの部品を作り、最後にそれを繋ぎ合わせて一つの形に組み上げる。中でもエルザが好きなのは、編まれた部品に綿を詰める作業。

「こうして、人形の中に綿を入れると……なんだか、満たされる気持ちになるの」「ああ、なるほど……そこだけ聞くと、『腸狩り』の趣味って感じだ」そして人形の完成間近になった所でログレスが「――エルザ。この『浄化作戦』、きな臭いと思わねえか?」と言う。勘の域は出ていないが、あんたの嗅覚はどうかと思ってと聞くとエルザは作戦が順調なのは喜ぶべきことだというと「あの男爵も食えない性格だぜ。グステコ聖教はどいつもそうだがな」と言う。

そこでエルザが酒場でログレスがグステコ聖教に怒っていた事を話に出すと、身の上話なんて聞いても面白くねえしあんただって自分の昔話しをほいほい話す気にならないだろと言う。するとエルザは「――私は元々、奴隷として親に売られたのよ」「ほら、黒い髪と黒い瞳は珍しいでしょう?両親の色は違ったと思ったのだけれど、古い血筋に原因があるとか……ずいぶんあとになってから知ったわね」過去を語り始めるエルザにログレスは呆気にとられる。しかしエルザは淡々と話を続ける。

⑤:エルザの過去

脳裏に蘇るのは親に売られ、極寒の世界に放り出された冷たい記憶――「でも、奴隷商に本格的に商品にされる前に他の子と一緒に逃げ出したの。失敗していたら今頃は娼館か、とっくに死んでいると思うけど。逃げる途中で捕まった子や、崖から落ちて死んだ子に比べれば、私は運がよかったみたい」「あとは適当に孤児として、一通りの悪いことに手を出した。その最中に、刃物の扱いを覚えて今に至る。――そんなところかしら?」

ログレスはなぜそんな話を俺に?と聞くと今のはただ隠すようなことではないから隠さなかっただけだと話す。するとログレスは自分の膝に片肘をついた。そして自分の家が聖教でそこそこの立場だったが、15の時に親が権力闘争に負けて没落したとか。父親は処刑され母親は教団に持っていかれ、自分は身一つで雪原に放り出されて死にもの狂いで足掻いたよう。

そしてこの国の権力者に聖教と無縁の奴はいないそう。俺らの雇い主とヴィクター・オルコスには何かあると話す。もし本当に領民を奴隷扱いしてるなら、オルコス領の守備兵の士気の高さが腑に落ちないと言う。なんだってゲス野郎のために最後の一兵まで命がけで戦うのか?

エルザは正直どうでもいいと話し完成した毛糸の人形を見せる。「手慰みにしては、なかなか上手にできているでしょう?」「持ち歩くのはカギ針と毛糸ぐらいでいいもの。この作戦の間にも、これでもう十体以上作っているわ。いい腸を見たあとは特に捗るの」「聞いてねえ」そしてログレスは部屋を後にしようとする。

「そういや、十体も作ったってわりに……部屋に人形ぁ置いてねえんだな」エルザは黒瞳を細め「――それなら、人形の行方は話さないことにするわね」とはぐらかした。

⑥:紅猟団

ログレスの疑念がどうあろうと浄化作戦はその後も滞りなく進んでいった。そこでイゴールに代わって私兵団の指揮をとっている青年が「戦がこれほど血沸くものとは……はは、歴史に戦いの絶えない理由もわかります」と話す。味方の勝利に興奮する青年にログレスとエルザが交互に冷や水を浴びせる。

それに対し青年は屠殺人にしては弱気ですねと言うと、ログレスは「慎重に、家畜の首を落とすだけの屠殺作業みてえに戦いを進める。だからそんな豚殺しみてえな呼び名がついてんでさ。このやり方が臆病だの弱気だのって言われんなら、うちの『紅猟団』が弱気じゃなかったこたぁねえな」と言う。半端な勝利に酔っていることを小馬鹿にされ青年は顔を赤くする。

結局、勝利に茹で上がった青年の勢いを止めることはできず『紅猟団』及び『腸狩り』には攻勢を命じられる。エルザは「今、ふと思ったのだけれどあなたたち『紅猟団』なんて名前なのに、白い毛皮を着て活動するのね」と言う。蠢く集団は全員が白い毛皮を纏っていた。「ハッタリを効かせてんだよ。『紅猟団』なんて名乗ってりゃぁ、誰でも勝手に赤い格好の奴らだと思うだろ。それにかかる奴が一人でもいりゃぁ儲け物だ」とのこと。

やがて、吹雪に曇る視界の果てに建物が見えてくる。おそらくは目的の守備陣地、向こうからもこちらの存在が視認される頃合い。「エルザさん、気ぃ付けて」「あんまし血塗れにしないで」「夢に見るんで」ログレスの部下たちも、危険な単独行動に出るエルザに声をかける。すでに十以上の共闘を経て彼らにとってもエルザの実力は疑いようがなくなったのだ。エルザも『紅猟団』の戦い方に一定の信頼を置いている。

エルザの役割はこの戦いを隠れ蓑に、建物の中に潜入して、敵の要を落とすこと。だが建物の裏口が開かれると、そこから竜車が飛び出していく。エルザは思考より直感に従う。そして彼女の直感は、竜車を追えと命じていた。振りかぶり、投じられた刃は円盤のように高速回転し、逃げる地竜の太い首を真後ろから両断する。竜車は激しく揺れながら雪原に停止した。

⑦:元・神殿騎士

「目的は達成。さて、中は……あら」扉を開けようとしたエルザが大きく後ろへ飛ぶ。竜車の中から進み出てくるのは、短い白髪をした壮年の男。左目に縦に入る古傷があり、白い口髭の似合う渋い顔貌。ただし、エルザの男性評価は外見を基準とはしない。――大事なのは、外身より中身。「その点……あなたは、とても私好みな気がするわ」「――麗しい乙女にそう言われるのは、一人の男として光栄なことだ」

男は深緑の瞳で死した地竜を横目にし、白銀の胸当てに手を当てて魂の安らぎを祈る。「その祈りと、聖教団の刻印が入った鎧――神殿騎士と、お見受けするわ」「元、神殿騎士だ。聖教への信心はすでに捨てている。今は一介の剣士に過ぎん」男の腰には左右両方に、細身の刀剣が一本ずつ携えられている。その両方の柄を握り、鞘から抜かないままに身構える。

「元でも神殿騎士には変わりないわ。ねえ、あなたも『祝福』は受けたのでしょう?」「話すと思うか?」「聞いてみただけよ。続きは、あなたの血肉に聞くわ」雪を蹴り、エルザの黒影が吹雪の雪原を駆け抜ける。踏んだ雪が潰れるより早く足を動かし、常外の歩法でエルザは男に躍りかかった。

神殿騎士は動かない。直後、とっさに体を反らすエルザの額を、二本の剣閃が掠めていった。赤の刀身と青の刀身、それは男の腰に携えられた刀のもの。西のカララギを発祥とした片刃の刀剣で、凄まじい切れ味で知られる貴重な武具。驚くべきは刀は確実に、鞘に収まっていたはず――。「いつ抜いたの?驚いたわ」「驚きはこちらも同様、避けられるとは思わなんだ」

刀の射程は長く、エルザの刀剣の倍以上もある。男の周りを高速で飛び回りながら、エルザの闘争本能は勝ち筋を探っていた。「抜く、入れる、抜く、入れる、抜く、入れる――」剣撃の速度に目を凝らし、男の剣の冴えに惚れ惚れしながら感嘆する。背後、本来の目標である建物では『紅猟団』とオルコス領守備隊とが戦っている。いずれはログレスたちが押し切るはずだ。そうなれば、この戦いにも援軍が駆け付け、戦況はエルザに優位になる。――ただ、それは最高に退屈な結末だ。

⑧:奴隷の扱い

興醒めな幕切れを避けるため、決断するエルザが強引に剣閃の中へ飛び込む。「――無謀な!」しかしエルザは男の二撃を防ぐ。ただエルザも武器を二本失う。次の瞬間、男の納刀が完了――無手のエルザ目掛けて赤と青の抜刀が放たれた。血が散り、剣撃が深々と肉を割る。

「馬鹿な……」「ああ、痛い、痛い。死んでしまうかと思った。――生きてる証だわ」剣撃はいずれも違わず、エルザの肉体を直撃している。それに対してエルザは何をしたのか。ただ、両腕を伸ばして立ち塞がっただけ。斬り飛ばすことができなかったのは、死を恐れず接近したエルザによって、刀の刃元で剣撃した結果。大量の血を滴らせ、確実に両腕を失う狂気の選択。

「私の勝ちね。 ――天使に会わせてあげるわ」エルザの唇が開かれ、その白い歯が男の首に喰らいつく。エルザの攻撃が男の頸部を致命的に抉り、血が噴出した。その後エルザは竜車の中を覗き込んだ。竜車の奥で冷たい風に震えていたのは――、「――これは、なかなか壮絶な光景のようですね」エルザの背後にいたのはイゴール子飼いの青年。

護衛も連れず、前線に一人で現れた青年にエルザは黒瞳を細めた。「あなたは司令部から動かない。…そう思っていたのだけれど」「私もそのつもりでしたよ。ですが、ヴィクター・オルコスが動いたとなれば話は別。私はそのために派遣されてきたんですから。もっとも…」そこで言葉を切り、青年は雪の上に倒れる壮年の亡骸に冷笑を向けた。

「どうしてヴィクター・オルコスが動くと、あなたが出てくる必要があるのかしら」「――どうしてだと思います?」微笑みを絶やさないまま、青年はエルザから十メートルほどの距離を保っている。青年によれば、今エルザが殺した人物こそがヴィクター・オルコス。此度の事変の元凶にして、領民を奴隷として扱う売国奴。だが、だとすれば――、「――竜車の中にいる子どもたちが、温かい格好をしているのがとても奇妙ね」

⑨:精霊と契約した神殿騎士

竜車の中には15人を下らない子どもが押し込まれていた。しかし、その服装は温かな毛皮を始めとした防寒具。「奴隷に着せる服装ではないわ」「何を根拠にそんなことを……」「実体験。裸同然のボロと殴られた傷、汚い肌と汚れた髪。何一つないのは不自然よ」過去の記憶を掘り返し、平然と言い返したエルザに青年の頬が微かに硬くなる。

「あなたはイゴール様のお気に入りなので、危害は加えたくないのですが……」「安心して。私はあの男爵様に何の関心もないから。脂身が多そうだもの」「なるほど。――では、大いに遠慮なく!」青年がこちらに向けて掌を広げた。その掌から、眩く輝く白い光が飛び出す。――それは、超常の力を秘めた光の生命体。「――精霊と契約した、神殿騎士」光は立ち尽くすエルザを呑み込み、白光は雪原をなおも白く染め上げた。

ーー目覚めた瞬間、エルザは平常心で周囲を観察する。見覚えのない、簡素な石造りの部屋。「気付いたようだな」そこにいたのは確かに喉笛を噛み切ったはずのヴィクター・オルコスだった。首筋には、あるべき傷が残っていない。「――『祝福』の力、ね」エルザはヴィクターへの警戒をほどく。

エルザの体には腕に包帯が巻かれてあり、治癒魔法も施された気配があった。そんな疑問を抱いていると「あー!お姉さん起きてる!ヴィクター様、またウソついて!」と十代半ばの少女が部屋に入ってきた。ノーラという少女はヴィクターに怒っていた。そしてエルザは気づく。ノーラは竜車の中にいた子だった。

エルザは包帯の匂いからノーラが巻いてくれたのだと気づき、なぜそうなったのか聞く。ヴィクターは話し始める。記憶は、ヴィクターの喉笛を噛み切った直後――その場に駆け付けた、イゴールの腹心である青年に襲われた場面を最後に途絶している。超常の力を持つ神殿騎士でありながら、青年はその実力を狡猾に隠し通していた。両腕の負傷もあり、あの青年には一方的に敗北したはずだったのだが。「核を砕かれる前に私の蘇生が間に合った。おかげで、彼の神殿騎士を退けることに成功した。その後は死した地竜の代わりに私が竜車を引き、撤退した」と言う。

⑩:イゴールの目論見

その後、連れ帰ったエルザを治療し目覚めるまで監視していたということだった。それを聞いてエルザは聞いていた話とは随分と人柄が違うみたいだと言い、領民を奴隷にし他国に売り渡し、領地に籠もって反抗を続ける売国奴だと聞いたと説明する。

するとノーラがヴィクター様が皆を奴隷にしているなんてのは嘘だと言う。そしてヴィクターは全てはイゴールの目論見であり冤罪だと話す。問題の奴隷売買をしているのは他でもないイゴールであり、それを告発しようと調査を勧め実際に奴隷として移送される彼女らを確保したまでは良かったが…という。つまりハメられたということだった。

そしてエルザは「それで?そんな話を私にして、いったい何が目的なの?」と言う。事情を知っても無関心なエルザにヴィクターは「私からお前に望むことは何もない。暴れてくれるな、とだけ言っておく。…それに、お前を助けたのもノーラの願いだ。私は雪に捨て置こうとした」と言う。エルザはノーラになぜ助けたのか問うと「……ただ、死んでほしくなかったから。それじゃ、ダメ?」「聖教の、聖王様や慈母様は命を慈しむように教えています。私も、本当なら死んじゃうかもしれないところをヴィクター様に助けられて…だから」と言う。

そしてヴィクターは「ノーラの願いだ。しばし客人として扱うが……動けるようになれば、早々にここを離れることだ。いずれ、イゴールの手勢はここへ押し寄せる」と言い、エルザはとりあえず動けるようになるまで厄介になることに。そして入用なものがあればノーラにと言われエルザは「――カギ針と毛糸、いただける?手持ち無沙汰を紛らわす趣味なの」と言うと2人を驚かせた。

エルザは寝台に横たわっており、両腕を怪我したエルザの代わりに編み物をしているのはノーラだった。そしてノーラが自信なさげに人形を差し出す。「上出来よ。あなたは手先が器用なようだから、奴隷以外でもやっていけるわ」とエルザが言う。

⑪:イゴール・ケナシュの歓待

実のところ、ノーラがどれだけ未来に思いを馳せようと、オルコス領に先はない。だから――、「何か、言いたいことがあるなら言っておいた方がいいわよ」とノーラに言う。「た、助けて…」「お願い、助けて…ヴィクター様も、みんなも、戦うしかないって、言ってて。だけど、戦っても」…勝ち目はない。大人たちが固めた悲壮な覚悟を、ノーラもまた理解している。理解したその上で、おそらく少女も覚悟を決めていたはずだ。「貸し借りは、返さなくてはならないものね」涙目の少女の方は見ずに、ただそれだけを呟いた。

エルザは宛がわれた部屋の扉を開け楽々と建物の外へ出ると予想通り、オルコス領の最奥にあるヴィクター・ オルコスの邸宅だった。振り返るとヴィクターがいた。しかし「誤解するな。ここでお前と一戦交えるつもりはこちらにはない」と言う。「――私は、私の思い通りにやらせてもらうわ。その意見は曲がらない」その手に、ノーラの作った人形を握りながら、エルザは雪に紛れて消える。

「おお!エルザよ、戻ったか!」エルザはイゴール・ケナシュの歓待を受けていた。エルザの負傷を見て「その傷が戻った理由であるか。マカリスタめ、使えん奴だ…!」と言う。どうやら、エルザとマカリスタとの激突は彼に伝わっていないらしい。連絡の怠慢か、あるいはマカリスタもヴィクターに殺された可能性もある。

するとイゴールの後ろに20歳前後、瓜二つの青年たちがいた。浄化作戦前には見なかった顔であり、精強な雰囲気と、聖印の刻まれた輝く聖鎧。疑いなく、神殿騎士の一員だろう。聞くと上からの派遣だと言う。そして「女は美しければ、賢すぎない方がいい」いずれにせよ、よくぞ戻ったエルザよ。その顔に、体に、傷がないことの方が重要よ」「元より、手足は其方に不要になるのであるからな」

瞬間、エルザの視界を斜めに割ったのは、風を薙ぐ凄まじい切れ味の一閃。それを鼻先で躱せたのは、あくまで奇襲を予期していたからに他ならない。「双鞭…..神殿騎士は本当に、次から次へと面白い得物を使うものね」ヴィクターが刀、マカリスタが精霊、そして眼前の二人が鞭の二刀流――双鞭を自在に操る双子の騎士、つまりは音速の攻撃が四条、室内を荒れ狂って制圧する。

⑫:双子の神殿騎士

「あなたの腹心から、私と決裂した報告はなかったものと思ったのだけれど?」「うむ。その話は初耳だ。吾輩はただ、疑わしきは罰せよ。――事前の作戦になかった要素は全て排除するつもりでいただけである。其方の場合は、事が済めば手足を落として愛妾にするつもりであった。故に、前倒しにしたまでのこと」「そう。――今、初めてあなたに対して好意を抱いたわ。いい趣味ね」

エルザは両腕をぶら下げたまま、滑るような踊るような歩法で駆け抜けた。双子の神殿騎士、その連携は見事なものだ。当たれば必勝の戦法――故に、小技に欠ける。「例えば、こうされたらどうする?」エルザが大広間の真上へ跳躍する。双子はその影を追い、鞭での追撃を選択したが、それは判断ミスだ。巨大な結晶灯をエルザの蹴りが砕き、大質量が一挙に地上へ落下する。

双子の神殿騎士は結晶灯に潰されるのを避ける。「――はい、掴んだ」左右から一条ずつ迫った鞭撃を、エルザは掲げた左右の腕で一本ずつ掴み取った。鞭を破損した結晶灯に結び付けそれを豪快に蹴り飛ばした。不測の事態に、一瞬の時間差は生じる。判断の遅れた片割れの顔面を掴む。直後、エルザは掴んだ相手と自分の位置を入れ替え、背後からの鞭撃の盾代わりに使った。

鋭い棘で自分の半身を傷付け、健在な方が息を詰める。そこで動きが止まってはいけない。落第だ。その動揺する顔面に、エルザは落ちていた鞭を叩きつけた。「兄弟仲良く、同じ傷よ。痛みを分かち合って」揃って鞭撃に顔を抉られ、のけ反る二人をエルザは鞭で一気に引き寄せる。その答力に逆らえず、双子の神殿騎士は真正面から激突、抱き合うように膝から崩れた。エルザは両腕の包帯を外し、ククリ刀を抜く。

「『祝福』されて生まれたのでしょう?私も、あなたたちを祝福してあげるわ」祝福された聖鎧ごと双子の胴体を真っ二つにぶった斬られ双子の神殿騎士は倒れ伏した。イゴールはエルザの腕の怪我の事を言うがエルザは「ああ、この包帯のこと?別に最初から治っていたのだけれど……せっかく巻いてもらった包帯だから、いつほどいていいのかわからなくて」と言う。

⑬:飛矢

エルザはほどけかけた包帯を潔く外す。その下には傷一つない白い肌―――ヴィクターの刀傷も、今の戦闘で受けた鞭の棘の傷もない。ひび割れた声で助けを求めながら、イゴールは屋敷の奥へ逃げ込んでいく。屋敷の最奥にある執務室には、外へ逃れるための隠し通路がある。そこまで逃げおおせれば、時間さえ稼げば、この恐怖に捕まることは――。

イゴールは不自然さに気づいた。邸内には私兵が20人以上控えていた。それなのに私兵の姿が一人もいない。「――やあっぱり、エルザってば好き嫌い激しいんだからあ」イゴールには、幼い童女の声に聞こえた。「この屋敷の人ってばあ、脂身ばっかりでやになっちゃう。影獅子ちゃんが太ったら、エルザに責任取ってもらうんだからあ」止まった思考で、しかし最期の瞬間にイゴールは理解する。ぬらぬらと赤く濡れた牙、それが私兵たちの返事がない理由の答えだと。「おやすみなさあい」

無数の刃を突き立てられ、ようやくヴィクター・オルコスの動きが止まった。『紅猟団』のログレス達は団員の数も半減、まさに死闘だった。場所はヴィクター・オルコスの邸宅。四日前、作戦中に行方不明になったエルザが欠けたことログレスの計画は大いに狂った。それでも低下した戦力は神殿騎士であることを明らかにしたマカリスタの参戦で賄った。

瀕死のヴィクターは「飛矢は、間に合わなんだ、か……」と呟く。ログレス自身この浄化作戦の裏にうすうす勘づいている。ヴィクターは十中八九ハメられた。しかしそれを明かす手段も方法もない。そこにマカリスタ・パーキンが現れる。その細面の青年の顔の半分には包帯が巻かれ、剥き出しの眼球は怒りに血走っている。「さあ、核を砕くぞ、咎人め。あなたのような背信者が、一時でも聖人として扱われていただなんて吐き気がする。神殿騎士の面汚しが」マカリスタがヴィクターの肉体を滅ぼすその瞬間。「――あら、少し遅れてしまったかしら」聞き覚えのある声にその場にいた全員の動きが封じられた。

⑭:神殿騎士マカリスタ・パーキン

「飛矢が戻った、か……」「――?いいえ、私は『腸狩り』よ。戻ったのは、あなたの欲しがるものを持ってきたから。本当は、渡してほしければ奪い合い ….なんて期待していたのだけれど」

そう言ってエルザは右手に掴んだ包を掲げた。その大きさと形状、嫌な予感がする。「よくも、よくものこのこと僕の前に顔が出せたものです!僕の顔を!目を!抉っておいて!再会すれば殺し合いになると、わかっているはずなのに!」「――?ええ、その通りね」今のやり取りで二人の間の確執がログレスにも理解できた。

マカリスタの顔面の傷は、エルザが刻んだもの。そしておそらくそれが、エルサが作戦中に行方不明になった理由――。「この男に加担して、勝てると思ったのか?この男が敵に回したのはグステコ聖教!グステコ聖王国!聖王猊下そのもので……」「あなた、ご主人様と全く同じ勘違いをするのね」エルザは手にした包みの結び目をほどく。恐怖に目と口を見開いて絶命したイゴール・ケナシュの首が。

イゴールの殺害――それはマカリスタが声高に主張した、聖教団への敵対行為以外の何物でもない。エルザ・グランヒルテはすでに、グステコ聖王国を気安く敵に回した。「私は私の思う通りに動く。その敵が聖教だとか、聖王国だとかはどうでもいいの。でも、頭の良くないなりに今回は色々考えたのよ」「ヴィクター・オルコス。『紅猟団』。それに精霊を使う神殿騎士のあなた」「あなたたち全員の腹を切り開くのに、どう立ち回るのが正解かしらって」

「運よく生き延びたことを忘れ、逃げ延びなかったことを後悔させてあげますよ!」激昂するマカリスタ、その周囲に淡い光が浮かび上がる。神殿騎士マカリスタ・パーキン――その若さで『浄化作戦』の要として、グステコ聖教団が送り込んだ精鋭中の精鋭。将来、聖教でも有数の地位を嘱望されただろう才人。――故に、彼は哀れだった。実力以上に醜悪なその性質に気付かず、人生最後の二分間を『腸狩り』と過ごしたこと。その苦痛と恐怖と絶望の百二十秒が、彼の信仰の日々の幕引きなのだから。

⑮:妹の足

「あら、先に精霊使いが死んでしまうと、精霊はいなくなってしまうのね」それがマカリスタの心臓を破壊し、彼に人生最後の絶叫を上げさせたエルザの、素朴にして簡潔な感想だった。『祝福』を賜った神殿騎士は、人間にはありえない回復力や生命力を持つ。個人差があるとはいえ、マカリスタの生命力も常人とは比較にならず、結果、弄ばれた。

「まだあなたたちがいたわね。それで、どうする?」「どうするもなにも….本当は殺し合わなきゃならねえんだろうが、やる気ぁねえ」『紅猟団」とは敵対関係だが、それを命じられる人間はまとめて死んでいる。「そこまで考えて、旦那を殺した……わけねえか。ついでだな」「あら、すごい。どうしてわかったの?」「いや、わかるっしょ」行動に理解ある傭兵たちの言葉に、エルザは目を丸くした。

「……それにしても、たった四日でよくもこれだけのことを。イゴールの屋敷とオルコス領を往復するのも楽じゃねえだろうに」「ああ、それは簡単よ。妹に足を借りたの」「妹…..?」ログレスはエルザの背後に巨大な影が湧くのを見た。確か影獅子の異名を持つ魔獣だ。だが、驚くべきはその魔獣の姿だけではない。魔獣の背から転がり落ちてきた赤毛の少女。「ヴィクター様!ヴィクター様!しな、死なないで……っ」

取り縋る少女に、ヴィクターは唇を動かして何事か囁く。それを最後にヴィクター・オルコスは死亡する。「どう、して…?」「どうして、ヴィクター様をみんなを助けてくれなかったの?」それはひどく、現実感に欠けた問いかけだった。幼いとはいえ、グステコで生まれ育った少女であれば、その不条理は十分に理解できる。エルザにはどうにもならなかった状況だと。

だが、その問いかけにエルザは不思議そうに首を傾げて「――ああ。助けてって、あなたの命だけのことじゃなかったの?」「てっきり、あなただけが助かりたいのだと思っていたから、あなたの命だけ拾ったあとのことは、私の楽しみを優先してしまったの。ごめんなさい」と少女の問いかけに真摯に答えた。

⑯:ノーラの恨み

その声音には嘘も、躊躇いも微塵もない。故に、聞いた誰もが信じられる。それが、エルザ・グランヒルテの掛け値なしの本音であると。「あ、あぁぁ―――ッ!」次の瞬間、ヴィクターの折れた刀を掴み、少女がエルザに飛びかかろうとする。しかしその暴挙を止めたのは『紅猟団』の男たち。

「なんで……なんで!死ね!ヴィクター様の!みんなの、仇ぃ!」「あなたの命の恩人なのに、ずいぶんひどいこと言うのね」その姿を見て、さすがのログレスも少女に同情した。そしてログレスはエルザにもういけと言う。エルザは渋々といった様子でククリ刀を鞘に収める。

「そうそう。その子だけど、奴隷にはなりたくないらしいの。だから、適当な町まで連れていってあげて。なんなら、あなたたちのところで使ってあげてもいいわ。女の子だし、手先も器用だから使い道はあるはずよ」「……この子ぁきっと、お前を恨むぜ」「――ええ、素敵ね。私とあの子とが、憎しみで結び付く。その憎悪をずっとずっと、体の中に溜め込んで、いつか再会したとき」。少女は男たちに取り押さえられたまま「死ねぇぇぇ――ッ!」「――それは、とてもとても素敵なことよ」それこそ、恋する乙女のような面持ちで、エルザは熱い吐息と共にそう言った。

「やあっぱり、エルザってすごく馬鹿な子よねえ」声はエルザの正面――雪中を駆ける魔獣の背に跨り、風と揺れを体感するエルザの胸に抱かれている少女のものだ。濃い青髪を三つ編みにした少女は「結局、傭兵の報酬はもらえないどころか、いっぱい偉い人を殺したせいで、指名手配までされちゃったみたいだしい。おまけに、あの女の子にも恨まれたんでしょお?」

「あら、ひどい。でも、別に構わないわ。聖王国に未練はないのだし……それに、おかげで殺し合いの相手には事欠かなくなったから」「グステコで動きづらくなって、ママに怒られちゃうでしょお」と会話する。

⑰:次の場所

気だるげに語尾を伸ばす少女の追及に、エルザは薄く微笑んで反論しない。代わりにエルザは懐に手を入れると、そこから毛糸の人形を取り出して「はい、メィリィ。新しいお人形」「もお、こんなことで誤魔化されるなんて思わないでほしいのよねえ」差し出された人形を受け取り、魔獣の背を撫でる少女は不満げに頬を膨らませる。が、人形を抱く腕は優しく、内心が言葉通りかどうかは疑わしい。

「それでえ、次はどうする?グステコじゃやりにくいし、寒いから引っ越す?」「そうね。そろそろ亜人の腸が恋しいわ。グステコだと奴隷以外では見かけないから」「魔獣ちゃんの種類も少ないしい。じゃあ、次はカララギ?」「――ルグニカにしましょうか」

提示された選択肢を蹴り、エルザは己の直感に従って、その王国の名を口にする。親竜王国ルグニカ――龍に守られた豊穣の、しかしどこか歪な場所だ。「それもお、なんとなくなの?」「ええ、そうね。――素敵でしょう?」

呆れたような少女の吐息に、エルザはただただ愉しげに微笑みながら応じた。生まれ故郷を追われ、エルザ・グランヒルテは親竜王国へ。そこで待ち受けている運命の邂逅は彼女にとって、それはそれは、愛おしい因縁の始まりとなる。――その事実を、今この瞬間の情欲に滾る『腸狩り』は知る由もなく。

「オルコス領の赤雪」の解説・考察

登場人物解説

●エルザ・グランヒルテ
ママの指示かは不明だが、元々の出身国のグステコに滞在し、イゴールに雇われ任務をこなしていた。その裏でメィリィと共に行動していた。

●ログレス・ハイアット
紅猟団の団長で屠殺人と言われる。冷静な判断で無貌な戦いはしないよう。エルザと同様にイゴールに雇われていた。途中でイゴールのきな臭さに気づく。

●イゴール・ケナシュ
男爵であり、実際に奴隷売買を行っていた人物。ヴィクターに暴かれるとヴィクターをハメて奴隷売買の罪をなすりつける。

●ヴィクター・オルコス
オルコス領の領主で元・神殿騎士。祝福を受けている為に超回復する体。武器は2本の刀剣で斬る度に鞘に刀を収めて抜くを繰り返す斬撃をする。ヴィクターの奴隷売買を暴いてハメられてしまう。

●霊獣オドグラス
四大精霊の一角で人間に対して友好的な姿勢。永久凍土に支配されたグステコで人々が生きられるのは、オドグラスの支配下にある無数の精霊、微精霊が力を貸してくれることが大きい。聖王国と聖教団のトップ、聖王を決める権限はオドグラスに与えられている。

●マカリスタ・パーキン
正体を隠していたイゴールの子飼いの青年で、精霊と契約した神殿騎士。グステコ聖教団が送り込んだ精鋭中の精鋭。しかし万全のエルザに2分でやられる。

●ノーラ
奴隷売買されかけた少女。エルザに編み物を教えてもらう。ヴィクターを助けてくれなかったエルザの非情な返答に最後には恨む。

●メィリィ・ポートルート
魔獣使い。連れてきていたのはギルティラウ。エルザ単独で浄化作戦に参加していたと思いきや裏で協力していた。

神殿騎士と祝福

神殿騎士とは、グステコ聖教団が保有する教団戦力で、聖王の祝福を受け、人外の力を振るうとされる選りすぐりの精鋭。一説にはヴォラキア帝国の九神将にも匹敵する実力者集団と、国の内外で噂されているとか。

祝福を受けた神殿騎士は人間にはありえない回復力や生命力を持つ。この話によれば核を砕かれない限り超回復で復活するようです。

ただ、以前特典小説で読んだ時はエルザの「呪い人形」と神殿騎士の「祝福」は同じ意味合いだったと思いましたが、エルザの「呪い人形」は核などなかったはずです。

リゼロ2期DVD特典小説『アポカリプスガールズ』で語られていますが、エルザは呪術をかけられ「呪い人形」になりました。他の「呪い人形」よりもエルザの回復能力は異常でした。心臓をなくしても死ななかったエルザなので、死ぬ回数に制限はあっても核というものは呪い人形には存在しなかったような気がします。

エルザとメィリィがいた理由

エルザとメィリィは基本的にママ(カペラ)の指示で動いており、ただ、エルザはそれでも結構自由に動いていました。

とはいえ、理由もなくイゴールに雇われるでしょうか?戦いを求めて適当に雇われて、その合間にママの指示があればそれに従うという感じかもしれません。

ロズワールの時もあくまでロズワールに依頼されての行動なので、ママ以外の指示で勝手に依頼を受けて行動するということもあるのかなと思います。

6章でのメィリィの死者の書を読む限りはエルザは自由だったと書かれてあったので、ママには完全に支配されていないといった感じでしょう。

リゼロ2期DVD特典小説『アポカリプスガールズ』では、最後にエルザが関わった2名がカペラに人質に取られた感じだったのでカペラの支配下に入った感じですけど、これだと、それがあっても自由に行動していた感じですよね。

エルザの黒髪黒瞳の血筋

そして今回出た「ほら、黒い髪と黒い瞳は珍しいでしょう?両親の色は違ったと思ったのだけれど、古い血筋に原因があるとか……ずいぶんあとになってから知ったわね」という発言について。

1章でもスバルの黒髪黒瞳は珍しいとラインハルトに言われていましたよね。黒髪黒瞳は日本人だけのものではないとは思いますが、わざわざこうやって小説内で出すくらいですから、エルザの古い血筋は日本人である可能性です。

つまり、異世界召喚された人物の血筋ではないかということです。これまでの中で異世界召喚されたとされる人物で、『古い血筋に原因がある』と考えられるのは400年前に存在した『ホーシン』もしくは『フリューゲル』でしょう。

そしてフリューゲルがスバル説があるので、400年前をループしているという仮説が通れば、エルザはスバルの子孫だったかもしれないというのがありそうです。そうだったら、凄い面白いですよね。

まとめ

ということで今回の内容をまとめます。

・エルザの黒髪黒瞳は古い血筋に原因がある
・ヴィクターはイゴールの奴隷売買の罪を押し付けられハメられた
・エルザはイゴールに雇われており、オルコス領の浄化作戦に加わっていた
・祝福を受けた神殿騎士は人間にはありえない回復力や生命力を持つ。
・エルザは作戦中に竜車の中の奴隷を見て異変に気づくと、イゴール子飼いのマカリスタと戦闘に
・ヴィクターとの戦いで両腕を失ったエルザはマカリスタに一時的にやられる
・ヴィクターらに介抱されエルザは、イゴールの元に戻るも双子の神殿騎士に襲われる
・双子の神殿騎士はエルザが殺し、逃げたイゴールはメィリィに殺される
・浄化作戦の最後にエルザが現れ、マカリスタと戦い殺す
・イゴールの屋敷からオルコス領へ移動はメィリィの魔獣に足を借りていた

動画での解説はこちらからどうぞ。

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